株式会社サイトパスファインダーは、独立行政法人産業技術総合研究所の研究成果を基に優れた医薬品の研究開発をすすめています。

PGx

Pharmacogenomics (PGx)とは何か?

Pharmacogenomics(PGx)は、Pharmacology(薬理学)とgenomics(遺伝学)を組み合わせた造語で、一般的に、薬理ゲノム学と翻訳されます。医薬品の効果や副作用に個人差があるのは、個々の患者の遺伝的背景、人種差、年齢、性別、環境要因(飲酒、喫煙、食事、健康食品など)などの多様な要因が複雑に関連するからです。さらには、処方されるいくつかの異なる医薬品の組み合わせによっても、効果や副作用に影響が出ます。PGxは、個々の患者の遺伝情報に基づき、薬剤応答(有効性、安全性)を調べる学問で、医薬品の研究開発段階から市販後調査にいたる幅広い領域で活用されております。ある特定の患者集団(Sub-Population)にのみ有効な薬もあれば、ある特定の患者集団にのみ副作用が発症しやすい薬もあり、PGxは臨床現場で患者集団を特定するための診断マーカーの開発にも不可欠です。
医薬品開発にあたって、従来の臨床試験にPGxを組み合わせた”Drug + Test”が世界の潮流になりつつあります。規制当局の推奨もさることながら、臨床試験の成功確率向上に貢献することが広く認知されてきたからです。

ヒトゲノムは約30億塩基対からなり、この塩基配列の約1,000塩基に1ヶ所の割合で存在する一塩基多型SNPs(single nucleotide polymorphism、スニップス)の違いが、病気に対する感受性や抵抗性、薬剤答性の個々差などに関係しております。通常、PGxを行う場合、候補遺伝子に焦点を当てて患者集団を絞り込む方法と、全ゲノムをカバーする約100万個のSNPsを用いる方法があります。新薬を承認申請するまでには約1,000症例の臨床試験が行われ、「多様な集団の統計学的平均値」として効果・副作用が判定・承認されますが、薬が広く使われだすと、1万例や10万例に1例くらいの頻度で、予想外の重篤な副作用が発症することがあります。このような場合、市販後に生じる副作用を事前に予測できるマーカーを探索する際にも、全ゲノムのSNPs解析が行われます。

このように、PGxは「個の医療」に向けた有効な手法の一つですが、前述したとおり、薬剤応答にはいろいろな要因が複雑に関連しているだけに、完璧ではないがベターな解決策を探る手法といえます。製薬企業にとっては、従来の臨床試験ではドロップアウトする可能性が高い化合物を、患者集団を特定することで救済できれば研究開発効率を向上できるメリットがあります。

PGxの利点

より効果的な医薬品の開発と市販後の副作用防止

PGxは薬効不十分な場合に患者集団を特定する”Efficacy PGx”と、薬効はあるが重篤な副作用を伴う場合に患者集団を特定する”ADR (Adverse Reaction) PGx”に大別されます。したがって、臨床試験開始前にPGxをデザインする際は、

  1. i) 対象疾患の発症、進行に遺伝的要因が関与している場合
  2. ii) 薬剤応答性に代謝酵素の遺伝的要因が影響する場合
  3. iii) 薬剤作用点(受容体、酵素など)の発現量や機能に遺伝的要因が影響する場合

を想定します。一方、臨床試験の途中や市販後で重篤な副作用に直面した場合、

  1. iv) 臨床試験で収集したDNAサンプルを用いて、レトロ・スペクティブに候補遺伝子解析や全ゲノム解析を行い、副作用予測マーカー(SNPs)を特定し、次いでプロスペクティブな確認試験を行うことで規制当局の承認を得ること

になります。

医療費の削減

高齢化社会と縮小経済の中での医療費の抑制は、世界的な潮流です。最近の英国医療経済査定機関(NICE: National Institute for Health and Clinical Excellence)は抗体医薬・標的分子薬といった先端医療に貢献する薬といえども、「費用対効果」、「薬の価格・価値」といった観点から一連の高額医薬品の保険償還を否決しました。これに呼応するように2009年3月に、オバマ政権は米国版NICEともいうべき”Comparative Effectiveness Study”に11億ドルを拠出することを決定しました。

どの薬剤を薬価償還すべきか吟味することで医療費抑制を狙うだけでなく、患者にとって、「最大限の効果が得られ、副作用を最小限に抑える」ためには、前述した”Sub-Population”の特定が必要です。まさにPGxは、製薬産業、医療機関、患者、保健機関すべてにとって不可欠のツールとなりつつあります。薬剤効果が期待される”Sub-Population”にのみ投与することで、医薬品の無駄な使用を減らすと同時に、患者の負担軽減にも貢献できます。

研究開発効率の向上

世界の製薬企業トップ15社の臨床試験の成功率の平均は、 Phase-I (65%), Phase-II (35%), Phase-III (58%), NDA (79%)です。特に、Phase-II はPOC (Proof-Of-Concept)を決定する重要なステップで、この段階にいたるまでには、その薬剤を上市するまでの研究開発費の50-65%が費やされています。この段階でドロップアウトすることは、企業戦略からも大きなダメージとなります。PGxにより薬剤有効性が高い被験者のみを対象とすれば、臨床試験規模が縮小することで、開発費用の低減、開発期間の短縮、より高い有効性の確保など、成功確率が飛躍的に向上します。

安全性は確認されましたが有効性が示せずに開発後期段階でドロップアウトして、新薬を待ち望んでいる患者に届かなかった化合物は膨大な数に上ります。これらの化合物を再吟味して、PGxで復活することは医療面、経済的にも意義があります。復活にあたって、残された特許期間が懸念されますが、”Drug + Test”により、患者集団(Sub-Population)を特定する”Test”を知財化することで新規特許同様に保護されます。

PGxとサイトパスファインダー/ PGXIS

サイトパスファインダー/PGXISは、細胞PGxと臨床PGxの融合といった、微視的かつ巨視的なファーマコゲノミクスへのアプローチにより、際立った相乗効果を生みだすと考えます。例えば、医薬品の作用機序に関連する遺伝子群を同定することは、臨床試験にて患者さん集団から得た知識を補完し、臨床試験を成功させるための強力な根拠となります。より良い治療法を患者さんの皆様へご提供するために、サイトパスファインダー/PGXISは、細胞PGxと臨床PGxとの強力な組み合わせによって、PGxを発展拡大すべく取り組んでいます。

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