株式会社サイトパスファインダーは、独立行政法人産業技術総合研究所の研究成果を基に優れた医薬品の研究開発をすすめています。

Transfection

当社は独自の技術である(1)固相トランスフェクション、(2)RNAiベースの化合物プロファイリングを用いた開発を行っています。

  1. 固相トランスフェクション技術により新規標的候補分子、代替経路の探索が容易に
  2. 化合物プロファイリング技術により薬剤の機能的な組み合わせをデザイン

固相トランスフェクション技術

固相トランスフェクションとその課題

従来の液相トランスフェクションでは、細胞をデバイス上で前培養してから、トランスフェクション試薬を添加していました。この手法は操作が煩雑な上、遺伝子導入効率が低いという問題がありました。
そこで、デバイスの固相上に導入する遺伝子を固定化し、その上で細胞を培養するだけでトランスフェクションを行う固相トランスフェクションが開発されてきました。代表的なものに、ウェルフォーマット(Homma Kら BBRC, 2001, 289, 1075-1081) や、マイクロアレイフォーマット(Ziauddin J and Sabatini DM Nature, 2001, 411, 107-110)による固相トランスフェクション技術があります。

しかしながら、これらの方法ではプロトコルは簡便化されたものの、多くの細胞種において遺伝子導入効率が低いという問題が依然として解決されていないため、適用できる細胞種が制限される欠点がありました。

課題解決のための当社技術

当社の創業メンバーである三宅正人(工学博士)は、細胞外マトリクスタンパク質(*)などの「遺伝子導入促進剤」を用いる独自の固相トランスフェクション技術を開発することにより、遺伝子導入効率を飛躍的に高めることに成功しました。
遺伝子導入促進剤の開発により、適用可能な細胞種が広がり、遺伝子導入効率が低くてお悩みの細胞でのトランスフェクション実験を可能にするものと思われます。

* 細胞外マトリクスタンパク質による遺伝子導入促進作用につきましては、細胞内ストレスファイバー誘引作用が引き金となって、細胞とDNA(RNA)層間の相互作用が増強されるメカニズムによるものと考えられます(Yoshikawa T, et. al., J. Control Release, 2004, 96, 227-232 ; Uchiyama E, et al., Neuroscience Lett., 2005, 378, 40-43)

適用可能な細胞種

遺伝子導入促進剤を用いたトランスフェクション用デバイスである当社の「トランスフェクションアレイ™」は、下表に示されるように株化細胞、初代培養細胞、間葉系幹細胞における固相トランスフェクションを可能としました。
当社では、複数の遺伝子導入促進剤を揃えており、その他の多くの細胞種においても高効率トランスフェクションが可能であると考えております。

また、浮遊細胞に対しては、例えば、Kato Kらにより(Biotechniques, 2004, 37, 444-452)、BAM(Biocompatible anchor for membrane)で修飾したデバイス表面で細胞を保持する方法が開発されており、浮遊細胞株K562 細胞での固相トランスフェクションが確認されております。このことは、当社のトランスフェクションアレイ™が付着細胞だけでなく浮遊細胞にも適用できることを示唆しております。

Applicable Cells Source
Cell lines
Hela human cervix carcinoma
T-47D human breast cancer
SK-BR-3 human breast cancer
MCF7 human breast cancer
MDA-MB-231 human breast cancer
MDA-MB-453-S human breast cancer
HEK293, 293T human embryonic kidney
Caco2 adenocarcinoma, colon
HepG2 human hepatocellular carcinoma
NT2 (NTERA-2) human teratocarcinoma
SHSY5Y human neuroblastoma
NIH/3T3, 3T3-L1 mouse embryonic fibroblast
PC-12 rat pheochromocytoma
Normal cells rat brain cortex neuronal cells
primary mouse embryonic fibroblast (MEF)
Human breast cancer cells Mice Bearing human tumor xenografts
Stem cells human mesenchymal stem cell (hMSCs)
mouse neuronal stem cell

フォーマット

従来の液相トランスフェクション法では、ウェルあたりの細胞数を減らすと遺伝子導入効率が低下するために、ウェルフォーマットとしては、384-wellが限界であると考えられてきました。

一方、固相トランスフェクション法では高い遺伝子導入効率が得られるため、1536-wellの高密度なウェルフォーマットの利用が可能となりました。さらに、マイクロアレイフォーマットは、長期培養条件での実験に適しており、表現型変化や分化誘導における標的候補分子のシグナル伝達系の時系列解析に対応しております。

当社では、多様なアプリケーションに対応するために、ウェルフォーマットとマイクロアレイフォーマットの双方を提供しています。

Comparison of high-density transfection format
1536 well Array 900
Cultivation procedure Batch (add only?) Batch, Fed-batch, Continuous
Short term culture? Yes Yes
Long term culture? No (difficult) Yes
Detection Homogeneous Fluorescent Yes No
Luminescent Yes No
Absorbance Yes No
Heterogeneous Fluorescent Yes Yes
Luminescent Yes Yes
Assay variation Widely coverd Relatively narrow
Reliability High High
Transfection efficiency High High
Culture volume / 900well (Batch culture) 4.5ml 10ml

化合物プロファイリング

RNA干渉を用いた化合物プロファイリングの原理

シグナル経路の構成要素解析では、RNAiベース戦略が薬剤と生物活性に係わる経路のプロファイリングに適用されています。しかし、生物活性は使用する細胞モデルに依存しているので、化合物プロファイリングには、至適細胞モデルとRNAiライブラリーが、臨床効果と相関している経路に符合するよう設計されていなければなりません。トランスフェクションアレイ™の技術の確立によって、多様な細胞種におけるRNAiベース戦略の展開が容易になりました。

RNAiライブラリーを用いてトランスフェクションアレイ™を作成し、開発候補化合物を添加した際に細胞表現型の変化をもたらす遺伝子を選別します。続いて、各化合物で共通している要素を除外し、各々に特異的に反応している遺伝子を同定します。その結果、各々の開発候補化合物の活性に関与する経路を同定することができます。

化合物プロファイリングの実施例 − 乳がんモデルにおけるドキソルビシンのプロファイリング −

siRNAライブラリー(ヒトチロシンキナーゼライブラリー;85遺伝子)で作成されたトランスフェクションアレイ™を用い、乳がん細胞株:SK-BR-3(試験細胞株)、T-47DならびにMCF-7(対照試験株)における抗がん剤(ドキソルビシン:DXR)依存的な亢進・抑制された遺伝子ならびに非依存的な遺伝子を探索し、それらの構成分子間の関係をパスウェイ解析により予測しました。

まず、DXRに対する感受性で細胞株を選別し、感受性株であるSK-BR-3とT-47Dに共通する因子を同定し、続いてSK-BR3に特異的なDXR亢進性経路と抑制性経路の因子を同定しました。続いて、非感受性株であるMCF7においてDXR非存在下で変動の見られた因子を選別し、最終的にすべての結果を統合することにより、DXRの作用経路と標的分子を特定できました。

トランスフェクションアレイ™を用いた化合物プロファイリングにより、DXR耐性患者、高感受性患者に対する同時投与すべき薬剤の標的候補とその組み合わせのデザインを明らかにしました。